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小林よしのり
2014.3.31 04:31

白馬事件とオランダの過剰な復習裁判


村山談話・河野談話に未来はあるか?

46回 スマラン慰安所「白馬事件」(その2)

 

インドネシア・スマランの慰安所におけるオランダ人女性

への強制売春事件は、後に「白馬(しろうま)事件」と

呼ばれた。

白人を馬のように使った事件という意味で、刑務所内で

言われるようになったという。

白馬事件を裁いたオランダ軍事法廷のBC級戦犯裁判

ただ一人死刑となった岡田慶治少佐は、慰安婦は希望者

だけだったと無罪を主張していた。

 

国内外49カ所で行なわれたBC級戦犯裁判は、審理は

杜撰そのもの、まともな弁護人もつかないことも多かった

暗黒裁判で、その実態は裁判の名を借りた敗戦国への

集団リンチに等しかった。

 

特にオランダ軍事法廷は酷かった。

350年もインドネシアを植民統治していたオランダの軍は

緒戦で日本軍にたった9日間で敗れた。

これはオランダ軍にとって、とてつもない屈辱だった。

白人が黄色人種に敗れたのである!

 

オランダ軍はその後4年間捕虜生活を強いられ、自力で

逆襲もできないまま連合国の勝利で勝ち組に滑り込んだ。

 

有色人種の支配下に置かれた屈辱、自力で勝てなかった

鬱憤が溜まっていた。

そして、日本の敗戦後、再びインドネシアを支配できると

思ったら、すでに日本軍がインドネシアの民族意識を育て、

インドネシアの国民軍まで作っていた。

オランダはインドネシア人に独立戦争を起こされ、思わぬ

苦戦を強いられていた。

そんな状況の真っただ中で、オランダ軍は日本への復讐心を

BC級戦犯裁判にぶつけたのだ。

 

かくして、日本軍とは9日間しか戦っておらず、戦勝国の

中でも最も被害が少なかったはずのオランダが最も残酷な

報復を行ない、死刑となった日本軍将兵は戦勝国中最も多い

236人に上った。

 

そのような事情から、スマラン慰安所の事件に関する裁判も、

公正な審理が尽くされたとは到底言えない。

慰安婦集めに重要な役割を果たしたオランダ人の

スマラン州長官や役人は逮捕もされず、証言もしていない。

 

有罪判決の決め手となったのは女性たちの証言のみで、

その点では朝鮮人慰安婦をめぐるケースとほとんど大差ない

と言っていい。

 

スマランの慰安所は日本軍司令部の命令で閉鎖されている

ので、違法な慰安婦募集があったことはまず間違いないが、

だからといってオランダ軍事法廷の判決書も信頼できる

資料とは言い難い。

特に死刑となった岡田少佐については、情状の余地が十分

あると思われる。

                   (つづく)

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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